TVアニメ「ラブライブ!スーパースター!!」2期 第6話に出てくる化学構造式
アニメとかまあまあ見るんですが、まあそれはそれとして、化学にも興味があるのでアニメとかに化学構造式が出てくると興奮しますね。
という感じなので、アニメに構造式が出てくるとそれを調べたりしたくなっちゃうので過去にもやっています。
はい。では、今回は「ラブライブ!スーパースター!!」2期 第6話です。オタクに教えてもらいました。ありがとう。
今ならYouTubeで見れます。各種配信サイトでも見れると思います。
それでは早速見てみましょう!開始40秒くらいでいきなり出てきます。
有機合成の人はみんな知ってる*1ナノプシャンですね。Wikipediaにも書いてある。
書き起こすとこうかな?
隠れている部分や小さい文字もほぼ正確に書き起こせます。なぜなら論文通りだから。(cf. Chanteau, S. H.; Tour, J. M. J. Org. Chem. 2003, 68, 8750. doi: 10.1021/jo0349227)
こんな人型の化合物実在するはずないと思いましたか?実在するんですね。論文にもなっている。しかもこの論文は The Journal of Organic Chemistry というアメリカ化学会が発行する有機化学分野ではかなりレベルの高い雑誌に掲載されています。
なぜでしょう? 面白い特性がある?合成が難しい?
いいえ。材料として有用だったり薬になったりはしませんし、合成も簡単です。僕でもできそう*2。
どうやらこれらはナノテクノロジーの分野を一般の人々に知ってもらうための化学教育プロジェクトの一環のようです。そのため、Journal of Chemical Educationの表紙を飾ったこともあります(doi: 10.1021/ed080p395)。
先の論文には『合成化学者はナノスケールの構造に魅力を感じるが、一般の人々とその魅力を共有できることはほとんどない。一般の人々は化学構造を複雑なアルゴリズムによって作られた理解しがたい抽象的なものとして見ている。ただし、フラーレンのような目に見える物体に似ているものを除いて。最も広く認識されている形は人間に違いない。』みたいなことが書いてある。
目に見えないけど人間みたいな形のものが作れるなんて、化学っておもしろ〜い!と思ってほしいところでしょうかね*3。
というわけで、ラブライブ!スーパースター!! 2期 第6話を見た人も化学に興味を持っていただけると嬉しいです。
さて、だいたいのコンセプト的なものを説明しましたので、ナノプシャンのおもしろポイントを簡単に書いていきたいなと思います。
上の図にもありますが、頭の部分を付け替えて、様々な職業のナノプシャン(=ナノプロフェッショナル)を合成できます。
頭部はアセタールという保護基にも使われる付けたり外したりが比較的簡単なパーツからできているので、別の原料(ジオール類)と混ぜてマイクロ波を当てることで交換できます。正直、構造式の書き方を歪めてそれっぽく見せてるだけでは?みたいな感情もある。グリーンベレーとかのチョイスおもしろいね。
骨格はだいたい薗頭カップリングで合成できるようになっているので、それに影響しないパーツなら比較的かんたんに入れられます。例えば足先に保護されたチオール基(-SAc)を入れたNanoKidが合成されています。これがなぜ嬉しいかというと……
金薄膜上に並べることができるんですね。これを嬉しいと思うのが化学者……
あとは
手先をちょっといじってやると、ポリマーも合成できました。分子の小人たちが手をつないでいるようになりましたね。
と、このように色々いじることができてなかなかおもしろいですね。な〜んの役にもたたん。
そんな感じです。
そういえば、これはちょっと余談ですが、ナノプシャンを合成したJames M. Tour教授、その後ナノカーというのを作っています。なんとこのナノカー、レースも行われており、今春には第2回が開催されて日本の物質・材料研究機構が優勝しています! NHK解説委員室の記事が手っ取り早くわかりやすい。
ということで、ラブライブ!の世界からナノスケールの化学の世界に興味を持っていただければ嬉しいなという記事でした。ありがとうございました。