アサルトリリィ Last Bullet に出てくる化学構造式を調べる
みなさんご存知かとは思いますが、アサルトリリィ Last Bulletというのがあります。
ありますね。
僕もアサルトリリィプロジェクトに興味があるので、やっています*1。
で、
こういうメモリア*2があります。
みんなで仲良く化学のお勉強でしょうか。
ん?なんか構造式書いてあるな?
— ておりあ👐 (@_theoria) 2016年10月2日
なんやろ
_人人人人人_
> 水 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄ pic.twitter.com/OAAmJlk2YF
このように、構造式があると注目してしまう習性があるので、当然これにも注目しました。
1番最初に分かるのはニコチン酸です。右下です。複素環の書き方にクセがあるな。
ニコチン酸とニコチン酸アミドを総称してナイアシンといいます。こっちの方が聞いたことあるかもしれません。ビタミンB3です。
怪物の白いのです^^
— 二川二水@アサルトリリィ原作公式 (@assault_lily) July 4, 2021
二水ちゃんが飲むエナドリにも当然含まれています。
問題はここからです。
こう? Nの位置が怪しいのと、NとHがややこしい。大きくピロリジジン誘導体に分類されるアルカロイドです。1位にアミノ基を持つ1-アミノピロリジジン類には、イネ科やマメ科の植物の共生菌が産生するロリン類があります。
こういうの。これらロリン類は細菌が共生する植物の害虫に対する毒性を持ち、植物の抵抗性を高めるものがあるらしいです*3。で、これの生合成経路では先の1-アミノピロリジジンが中間体として存在するらしく、そこから酸化して酸素の架橋が生成するっぽい*4。
そんな感じです。
続いて……
わけわからんの来たな。
こうでしょうか? 明らかにNの腕が余ってたりするのでなんらかの間違いがありそうです。探してみましょう。
発見されました。Nagelamide Kです。これは、2008年に北海道大学の小林淳一らによって沖縄のAgelas属海綿から単離・構造決定されたブロモピロールアルカロイドで、グラム陰性菌に対して抗菌活性を示すことが報告されています*5。Agelas属海綿は似たような要素を持つ様々なアルカロイドを産生するっぽいですが、nagelamide Kはアミノイミダゾール環やタウリン構造を持つ珍しい構造のようで、全合成のための研究が進められてきたようです。徳島大の難波らが全合成を達成したようですが、まだ論文化されてない?*6
今回はこんな感じです。はい。アルカロイドの勉強してるの?
*1:デイリーミッションを週5回くらい消化するくらい
*2:戦闘時の行動を決める装備?
*3:Loline alkaloid - Wikipedia
*4:Faulkner, J. R.; Hussaini, S. R.; Blankenship, J. D.; Pal, S.; Branan, B. M.; Grossman, R. B.; Schardl, C. L. ChemBioChem 2006, 7, 1078-1088.
*5:Araki, A.; Kubota, T.; Tsuda, M.; Mikami, Y.; Fromont, J.; Kobayashi, J. Org. Lett. 2008, 10, 1523-7060.
*6:科研費の研究実績報告書に全合成を達成したって書いてある。
示唆された、までの口頭発表は出てます。 日本薬学会第140年会(京都)/Nagelamide Kの全合成研究